ぐずっている子どもと、話をするきっかけになるような絵を描きたい。
「小さい頃からお絵描きが好きで、よく人形とかを描いていました。小学3年から庄野ヒカル先生の教室で絵を学び始めて…その時ですね。今でも大好きな色、コーラルレッドに出会ったんです」と幼い頃の思い出を楽しそうに語る中山さん。高校はデザイン科に進み、卒業後は企業に勤めながら創作を続け、21歳で夢だった個展(その名も「はじめまし展」)を岡山市のギャラリーで開くことになる。
「300人くらいの人が来てくれたんですよ。そんな経験は初めてで…うれしくて作品展がやみつきになりました(笑)」。
そんな中山さんに転機が訪れたのが2人目のお子さんを出産した1年後。「以前、作品展で知り合った高知の産婦人科の先生から『手術室の壁に絵を描いてほしい』って依頼があったんです。隣の分娩室から伝わってくる赤ちゃんの声を聞きながら3日間かけて描きました。ベテランの看護士さんが『毎日入る私たちでも怖い雰囲気の手術室が、絵のおかげで楽しくなった』といわれたときは、本当にうれしかったですね」。その後も病院や工場など、中山さんのホスピタルアートの場は広がっている。「これからは、たとえば診察の時にぐずっている子どもに『ほら、あそこにキリンさんがいるよ』なんて話のきっかけになるような絵を描きたいですね。そのためにもまだまだ勉強中です」。
見る人の心の奥にある小さな琴線をくすぐるような中山さんの絵。子どもからお年寄りまで年齢を超えて、伝わっていく描き手の思い。それは、いつも朗らかで笑みの耐えない中山さんの人柄そのものがにじみ出た絵だ。