人の真似をするな。自分の真似もするな。
「朝日高等学校の時の話です。たまたま入部した書道部で、『岡山県書の美研究会』を設立していた河田一臼先生の指導を受けたのが書道との出会いでした。河田先生は創造性を大切にする指導法でとにかくユニークな方でした。『変わった一臼』と呼ばれていたくらいですから…」と笑う曽我英丘さん。 その後、河田氏の師匠で、当時、前衛書の先覚者であった上田桑鳩氏の書に出会う。「書をもっと学びたい。師事するならこの人しかいない」と決意。大東文化大学へ進学し、本格的に上田桑鳩氏から書道を学ぶが、とにかく枚数を書くも、上田さんになかなか認められず…。「二年の夏に進退をかけて提出した作品でやっと『これでいい!』と言われたんです。私の必死の気持ちが伝わったのでしょう(笑)」。 それまでは臨書中心だったが以来、創作にも本格的に取り組み始める。卒業後は教職のかたわら自らの制作にも打ち込み、毎日書道展・前衛之部毎日賞を受賞したほか、長野冬季オリンピックやワールドカップフランス大会会場に作品が展示されるなど、国内外で高い評価を得ていった。 「上田先生は常々、『人の真似をするな。自分の真似もするな』とおっしゃいました。『自然の造形がわからんやつに筆は持てない』とも」。 一九九〇年頃からは『宇宙』をテーマにした作品を発表。東日本大震災に際しては、『混沌』『断裂』の思いをダンボール紙に書き上げた。 「海辺にダンボール紙を広げて海を見ながら書くんです。比べると海の方がスケールがでかい。自分がちっぽけに思えてね…」。今後はカラーにも挑みたいという曽我さん。創作への思いはまだまだ熱い。
前衛書道家 曽我英丘
1940年岡山市生まれ、74歳。河田一臼、上田桑鳩に師事。大東文化大学卒業後、教師として書道と国語を教える。現在は独自の書表現で数々の作品を発表。玉龍会会長、環展会員。 岡山市北区撫川1085 TEL.086-296-3637