大切なのは、その人が使い切れるかどうか見極めること。
日本人選手の活躍もあって年々注目度が上がっている車いすテニス。今回ご登場いただいた珍行美貴夫さん(六五歳)は、そこで使用する競技用車いすの製作を手がける第一人者。 「二十歳の時、仕事中の事故で車いすの生活になりました。その後、リハビリがてらバスケットを始め、同時にマラソンもするようになりました。大分国際マラソンには六年連続出場、ホノルルマラソンにも参加しました。ベストタイムは三時間くらい。ずいぶん昔の記録ですが…」と笑う珍行さん。 テニスを始めたのは三七歳の時。週三回、一回三時間の練習をこなすほどのめり込んだ。車いすのカスタマイズを手がけたのはその頃から。 「本人の希望を聞いてメーカーに細かい指示を出すのも私の仕事です。テニス用車いすは、日常生活での使いやすさは考慮されていません。素早く向きを変えてボールを打ち返す位置につくことができるように、「キャンバー」といわれる左右の車輪の上部が内側にハの字のように傾斜しているのが特徴です。程よい角度を付けることで回転性能も良くなります」。 ちなみに車いすテニスはボールを相手コートに打ち返すまでに二度のバウンドまで認められている。二度目のバウンドはコート外に出てもよいそうだ。「競技用車いすの製作で大切なのは、その人が使い切れるかどうかを見極めること。車いすに乗せられているようでは駄目なんです。障害の程度や体格、筋力によって一人ひとり調整が必要。私自身、長年の経験で感覚的な部分は誰よりも分かるつもり。本当に乗れているかどうかが分かります」。六〇歳からはアーチェリーも始めた珍行さん。さらなるご活躍を祈念しております。
競技用車いす製作 珍行 美貴夫
自身の経験と知識を生かし、これまでにテニス用、バスケット用、マラソン用など多くの競技用車いすの製作を手がける。現在、ウィル・チェアー岡山有限会社代表。岡山県車いすテニス協会事務局長 【お問い合わせ先】 岡山県車いすテニス協会 倉敷市児島田の口7丁目7-4
車いすテニスの黎明期からのキャリアを誇る珍行さん。「昔はみんな下手だったからやりやすかった!」と周囲を笑わせる。