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社長のちょっと独り言
イベントの企画・運営から保存・修復、地域との取り組みまで
様々な専門分野のプロが大原美術館の今と未来を支えている。


梶谷「大原美術館は、事業家・大原孫三郎氏が、盟友でもあった画家・児島虎次郎(設立の前年に死去)を記念して昭和五年に設立した、日本最初の西洋美術中心の私立美術館。私も地元の人間ですから、小学生の頃からよく来館していました。絵のことはよく分かりませんでしたが、当時から好きだったのがセガンティーニの『アルプスの真昼』です。明るく澄んだ色彩で、強烈な印象を受けたのを今でも覚えています。皆さんの好きな絵は? 選ぶのが難しいでしょうが(笑)」。
門利「私はサム・フランシスの『メキシコ』です。解放的な雰囲気に惹かれます」。
藤田「私はモローの『雅歌』です。小さな作品ですが美しい水彩画で、ひとつ持って帰ってもいいよと言われたら、これを選びますね(笑)」。
塚本「私は絵画の修復が専門なので、仕事柄作品はどうしてもフラットに観てしまいます(笑)。好き嫌いというよりも材質やキャンバスの状態など、物理的な部分に目が行きますね」。
梶谷「ちなみに私は酒津で生まれ育ちましたから、無為村荘(虎次郎の旧アトリエ)の周りは遊び場でした。聞くところによると、私の祖父は虎次郎さんから絵を習っていたそうです」。
藤田「素敵なエピソードですね。地域とのつながりという点では、今でも年間述べ三千五百人、幼稚園など、約二五施設の子供達が来館しています。幼少期から美術が体験できると好評です」。
門利「実は当館の理事長(大原あかね氏)は、日頃から『つながる』という言葉を大切にしようと言い続けています。ギャラリーコンサートやナゾ解きゲーム『ヒミツの絵画を探せ!』などは、まさに『つながる』ための試みのひとつです」。
梶谷「一昨年倉敷で開催されたローカルサミットでは館内でパーティーが催されて、食事も楽しめたんですね。あの時は皆さん喜ばれていましたよ」。
藤田「現場を運営する者としては、大原美術館をどう使いたいか? あれもできるんだ、これもできるんだという、発想の飛躍が大切だと思っています。実は今年で五回目になりますが、婚活イベントも開催しています。大原美術館は『恋愛のパワースポット』らしく、カップル成立率も高いそうです(笑)」。
梶谷「それはおもしろいですね。一方で展示するという観点から、絵画の保存・修復は大切な作業だと思いますが、塚本さんいかがですか」。
塚本「当館のように保存・修復の専門職を常勤させている美術館は日本でもごくわずかです。保存・修復は『信頼』が要求される仕事。伝統的な作品をどうやってつないでいくかがこれからの課題です」。
藤田「一般の方は美術館の人間はみんな学芸員と思われがちですが(笑)、実際にはそれぞれの専門分野のプロが運営を支えています」。
門利「そういった意味では、美術に興味のない人にも振り向いてもらう、関心の扉を開くのが私たちの仕事です」。
梶谷「そういえば『ARKO(無為村荘を若手作家に制作現場として提供)』のアーティストの方は、盆踊りにも参加されて、地元に溶け込んでいますね。私も地元民としてとても誇りに思います。これからも皆さんの力でぜひ『つながる! 大原美術館』を! 本日はありがとうございました」。
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