赤・青・黄、三色から生まれる無限の色。

「福岡から久米南へ移住した理由ですか? 息子が岡山の大学に進学してそれがきっかけでたまたま久米南町をクルマで通りがかったんです。その時に妻と『ここらあたりはイタリア・トスカーナ地方に似ているね』と。昔スケッチ旅行で訪れたフィゾーレの丘を思い出しました」と懐かしそうに語る天野さん。
それ以来、久米南町のことが忘れられず、一五年前、五八歳の時に転居。「わざわざイタリアまで行かなくても良くなった」と笑う。
 もともと画家をめざしていた天野さんだが学校卒業後は造園関連の会社に就職。仕事の合間に絵を描く日々が続く。「現場でスラスラとパースが描けるということで、仕事は繁盛しました。お客さんからも喜ばれましたね」。
 そんな天野さんが描くのは四季折々の花や刻々と変化する景色の移ろい。自然に対する慈しみと細やかな視点は、観る人の心にほんのり明かりを灯す。
「私の絵の特徴をひとつ挙げるとしたら赤・青・黄の三原色の絵具だけで描くことでしょうか。もともとは油絵を描いていたんですが、ある時、水たまりに落ちたオイルの油膜が光の加減で虹色に見えるのを描こうといろいろ絵具を混ぜてみたんです。ところが色を使えば使うほど色自体は濁ってしまう。要は色の使い過ぎ。結果、試行錯誤の末、三原色のみで無限の色を表現できるようになりました」。
 天野さんが「虹色」を表現するのには何年もかかったそう。ちなみに雪の白は影を作り、白そのものは画用紙の地の色を残すとのこと(左写真)。現在は「三彩(みいろ)の会」を主宰し、絵画指導も行っている。「スケッチ旅行には86で出かけます」。好奇心いっぱいの天野さんの瞳は輝いていた。

 

画家
天野亮三

1942年生まれ。福岡市出身。東京でインテリアデザインを学び、福岡帰省後は造園設計・施工の会社に勤務。その時に一級造園技能士、樹木医の資格を取得。早期退職、独立後、岡山県久米郡久米南町へ転居。それを機に絵画指導と自身の水彩画創作に専念している。
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