ホームスパンは最先端産業って言われています(笑)。

羊の原毛を洗い、染め、紡ぎ、織って作った毛織物をホームスパンという。ひとつひとつの工程が手作業のため、製品になるまでに多大な手間と時間を要するが、毛織物としての柔らかさ、軽さ、何より色彩の美しさは格別なものがある。そんなホームスパンを手がけて四〇年余り。岡 文女さん(七二歳)は多くのファンをとりこにする織工の一人。
「大学受験に失敗して(笑)、料理の世界を覗いたり…。織物を始めたのは三〇歳の頃から。見よう見まねで、どうしても知りたいことができると、日本各地の先達を訪ねました。最初はお金にならず、うまくいくようになったのは五〇歳を過ぎてからです」と屈託なく笑う岡さん。
 数ある工程の中でも特に集中力が必要とされるのが『染め』。色に用いるのはコチニール(カイガラムシ科のエンジムシから作る染料)や自宅周辺で採取した草木など。
「染めは一発勝負。通常、絹や綿は薄い色から重ねて染めることができるのに対して、毛は濃い色から染めるため、やり直しがききません。四〇年やってきましたが、色の数は無限大です」。
 すべての工程が人力によるため作業はある意味、体力勝負。春夏秋冬、一年を通じて休む間はない。
「一番楽しいのはね、染めた原毛をパレットの上で色を混ぜ合わせるように調合して、その後、機械ですいて、糸に紡ぐ時です。子供の頃から絵を描くのが好きで本当は絵描きになりたかったから、色を作るのが楽しいんです」と朗らかに語る。表情があって味わいがある、太くてゆるい糸を作りたいという岡さん。「今、ホームスパンは再生可能な最先端産業って言われてます」。創作意欲はますます旺盛だ。

作品はマフラー(9,000円〜)やストール(3万円〜)など。作品展のほか岡さんから直接購入することも可能。

 

織工
岡 文女

1942年中国天津生まれ。岡山県立朝日高等学校卒業。子供の頃から絵を描くことが好きで、1970年初め頃から独学でホームスパンを始める。自然の風合いを生かした多彩な色使いが魅力。
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