私は「アリメロ」。作品の本質を理解して、綺麗な曲をやりたい。

  「例えばベートーベンの曲を長年演奏していると、フッと分かるときがあるんですよ。あ、ベートーベンもアホやってるなって(笑)。そうなると逆に親しみが沸きますね」といたずらっぽく語る作曲家の上岡洋一さん。東京藝術大学作曲科にて、池内友次郎氏、矢代秋雄氏など、当時の日本を代表する作曲家の薫陶を受けた後、岡山にて音楽教師として奉職。昨年、還暦を機に退職し、現在は岡山市内に研究所を構えて音楽研究と作曲・指導に没頭している。
  上岡さんの歩みは、そのそうそうたる作品群が物語る。晴れの国おかやま国体(2005年)の開・閉会式ファンファーレや「まなびピア岡山2007」のイメージソング。全日本吹奏楽コンクール課題曲・March『潮煙』(1993年)や『はるか、大地へ』(1996年)など、その存在感は圧倒的。「作曲家には音の組合せを考えて作る『ノーメロ』と、頭の中に聞こえるメロディを楽譜におこす『アリメロ』の二種類がいます」と上岡さん。ちなみに上岡さんは『アリメロ』。日頃から演奏者には「技術だけじゃなく、曲の本質を理解して綺麗な曲をやろう」と呼びかけているそうだ。
  最後に、作曲家としてこれからやり遂げたいことは?との問いに…「吹奏楽コンクールに出ている子ども達に、やればやるほど、『音楽がつかめる曲』を作ってあげたい」。終始、柔和な笑顔を絶やさない上岡さん。しかし現在の商業主義に走る音楽界に対しては時折、厳しい意見もちらほら…。取材の合間にサラリと奏でてくれた軽やかでいて憂いを秘めたピアノの音色。音楽の本質を全身全霊をかけて愛する名人の一途な一面が見えてきた。

 

作曲家
上岡洋一

1949年高知県生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院音楽研究科修了。
日本吹奏楽指導者協会作曲賞(1976・1979年)ほか受賞多数。現在はコンクールの課題曲作りや審査、西日本を中心に学校や吹奏楽団などの指導にあたっている。