子どもたちは、組み木の一片一片で物語を作って遊ぶんです。

 東京・神田に生まれ、、浅草で育った小黒さん。「姉が三人いて家には鴨居に届かんばかりの七段飾りのお雛さまがありました。母や姉が留守の時にこっそり手にして遊ぶのが好きで、四〇歳を過ぎてお雛さまを作るようになったのもその時の思い出からでしょうね」と笑う。
   大学で油絵を学び、卒業後は中学の美術教諭になるが「セザンヌの絵を見てどう感じるか。五つの中から感想を選べ」といった美術教育に疑問を感じて養護学校、盲学校への転属を希望。そこで小黒さんは教材として初めて組み木を作ることになる。
  「目に障害を持つ子どもたちは触らないと日常生活が成り立たないんです。それも小さい時から訓練するほど、『触界』が広がるんです。どうやったら子どもたちの『触察』能力を伸ばせるか。そこで思いついたのが組み木だったんです。もちろん見本なんかないから自分で作ってしまいました。全盲の子どもには○や△といった幾何学形を、弱視の子どもには動物や家族を…それが組み木デザイナーとしてのスタートですね」。
   その後、一九八〇年にスイスのおもちゃメーカー・ネフ社とデザイン契約を締結、「大原美術館があるから」という理由で鎌倉から倉敷へ移り住んだ。 一九八三年には知人とともにおもちゃメーカー「遊プラン」を設立。
   現在は、ご自身の制作活動だけでなく「作る人を増やすのが私の役目」と貴重な図面を惜しみなく公開、一昨年は韓国から招かれて現地の木工指導者に組み木を教えたそうだ。
   「やはり新作を作らないとダメ。月に一〇点」。穏やかな笑顔に秘めた創作への意欲。
小黒さんの心は次の作品に向かっている。 

 

組み木デザイナー
小黒三郎

1936年東京都生まれの小黒さん。
多摩美術大学絵画科を卒業後、中学校の美術教諭。
その後、盲学校・養護学校勤務を経て、組み木デザイナーになる。
小黒三郎組み木館ズートピア(熊本県小国町)館長、遊プラン取締役。


一日中、机に向かって図面を描くことが多い小黒さん。体力づくりのために毎日夕方1時間プールで泳いでいるそうだ。プールまでの行き帰りの1時間もなんと自転車。“ふとんに入ったら5分で寝られます!”。73歳になって、なおも旺盛な創作意欲の秘密はそのあたりにありそう。